01|イノチグラスに関する研究
カラーレンズと姿勢制御の関係
2025年、カラーレンズによる視覚刺激と姿勢制御との関係を調べた研究が、国際学術誌 Scientific Reports に掲載されました。
研究では、健常成人12名に対して26種類のカラー条件で片脚立位を行い、フォースプレートを使用して身体の重心動揺を測定しました。
その結果、カラー条件によって姿勢制御に良い方向・悪い方向の変化がみられました。
そして特に興味深いのが、
「どの色で反応するかには個人差があった」
という結果です。
特定の色がすべての人に共通して良かったのではなく、姿勢が安定しやすい色・不安定になりやすい色は、それぞれの人によって異なっていました。
この研究は、眼から入る「色」という視覚条件の違いが、姿勢制御に影響する可能性を示しています。
研究論文
Effect of color visual stimulation by colored glass lenses on postural control
Zhang W, Takada H, Hettmannsperger M, et al.
Scientific Reports. 2025;15:7027.
DOI: 10.1038/s41598-025-88102-4
※本研究は健常成人12名を対象とした研究です。カラーレンズによる疾病や症状の治療効果を示したものではありません。
アイコンディションの眼鏡づくりは、イノチグラスに関する研究だけを根拠としているわけではありません。
視覚科学、両眼視、神経科学、姿勢制御、感覚統合など、さまざまな研究領域の知見を参考にしています。
ここでは、当店の考え方と関係の深い研究領域をご紹介します。
視覚 × 前庭感覚 × 体性感覚
人間が姿勢や身体のバランスを保つためには、
視覚
× 前庭感覚(耳から得られる平衡感覚)
× 体性感覚(筋肉・関節・足裏などから得られる情報)
など、複数の感覚情報の統合が必要です。
視覚は単に「物を見る」ためだけの感覚ではなく、自分と周囲の空間との関係を把握し、身体を安定させるためにも利用されています。
そのためアイコンディションでは、眼と身体をまったく別のものとして考えるのではなく、視覚が身体全体の感覚情報処理の一部であるという視点を大切にしています。
両眼視とピント調節
私たちは、左右2つの眼から入ってきた情報を脳でひとつにまとめて世界を見ています。
また、近くを見るときには、ピントを合わせる「調節」と、左右の眼を内側へ向ける「輻輳」などが連携して働きます。
そのため、視力表で「1.0が見える」ということだけでは、日常生活でどの程度快適に見えているかをすべて評価することはできません。
アイコンディションでは、必要に応じて左右の眼の使い方やピント調節なども確認しながら度数を考えます。
中心視と周辺視
私たちの視覚には、見たいものを細かく確認する「中心視」と、その周囲の空間や動きを広くとらえる「周辺視」があります。
特に身体の動きや姿勢制御では、視野に生じる広い範囲の動き(オプティックフロー)が重要な情報になります。
そのため、単純に「中心がどれだけ鮮明に見えるか」だけではなく、周囲を含めた視覚情報をどのように感じるかという視点も、快適な見え方を考えるうえで重要だと考えています。
光・色と視覚
同じ光や色でも、「心地よい」「眩しい」「見やすい」といった感じ方には個人差があります。
また、カラーレンズについても、すべての人に同じ色が適しているという科学的根拠が確立されているわけではありません。
だからこそアイコンディションでは、
「この症状にはこの色」
という一律の選び方ではなく、実際の見え方や感じ方、身体の反応などを確認しながら、その方に適した視覚環境を探していきます。
参考文献
・Zhang W, et al. Effect of color visual stimulation by colored glass lenses on postural control. Scientific Reports. 2025;15:7027.
・Peterka RJ. Sensorimotor integration in human postural control. Journal of Neurophysiology. 2002;88:1097–1118.
・Chaudhary S, Saywell N, Taylor D. The Differentiation of Self-Motion From External Motion Is a Prerequisite for Postural Control: A Narrative Review of Visual-Vestibular Interaction. Frontiers in Human Neuroscience. 2022;16:697739.
※「アイコンディションが参考にしている研究」は、イノチグラスそのものの有効性を証明する研究ではありません。当店の測定・眼鏡設計の考え方の背景となる視覚科学・神経科学等の研究として掲載しています。
科学研究から、視覚が前庭感覚や体性感覚などと統合され、姿勢制御にも関係していることは広く知られています。
一方で、
「特定の色によって特定の症状が改善する」
「眼鏡によって身体の不調を治療できる」
といったことまで科学的に確立されているわけではありません。
アイコンディションでは、研究結果を必要以上に拡大解釈するのではなく、現在分かっている科学的知見を参考にしながら、目の前の一人ひとりの反応を確認することを大切にしています。
科学と、一人ひとりの感覚を大切に
同じ度数でも、快適に感じる人と違和感を感じる人がいます。
同じ色でも、心地よく感じる人とそうでない人がいます。
人間の視覚は、視力というひとつの数字だけでは表すことのできない複雑な感覚です。
だからこそ私たちは、
「よく見える眼鏡」から、
「その人にとって快適に見える眼鏡」へ。
科学的な知見と、一人ひとりの実際の反応。
その両方を大切にしながら、眼鏡を考えています。
Q. イノチグラスには科学的な研究がありますか?
はい。カラーレンズによる色覚刺激と姿勢制御の関係を調べた研究があり、2025年に国際学術誌「Scientific Reports」に掲載されています。
この研究では、健常成人12名を対象に26種類のカラー条件で重心動揺を測定し、色によって姿勢制御への反応が変化し、その反応には個人差があることが報告されています。
ただし、この研究だけでイノチグラスのすべての効果や、病気・症状への治療効果が証明されたわけではありません。
Q. カラーレンズを掛けると、姿勢が良くなるのですか?
必ず姿勢が良くなるということではありません。
研究では、色によって姿勢が安定する方向に変化する場合だけでなく、不安定になる方向への変化も確認されています。また、どの色で反応するかにも個人差がありました。
そのため、「この色を掛ければ誰でも姿勢が良くなる」というものではないと考えています。
Q. なぜ眼鏡と身体のバランスに関係があるのですか?
私たちの脳は、眼から得られる「視覚」、耳から得られる「前庭感覚」、筋肉や関節などから得られる「体性感覚」などを組み合わせて、身体の位置や動きを判断しています。
そのため視覚は、物を見るためだけでなく、姿勢や身体のバランスを保つために使われる情報のひとつでもあります。
Q. 「この症状にはこの色」という決まった色がありますか?
現在のところ、特定の症状に対して、すべての人に共通して適した色があるとは科学的に確立されていません。
色や光の感じ方には個人差があります。
そのためアイコンディションでは、「○○には青」「○○には赤」といった一律の選び方ではなく、実際の見え方や感じ方などを確認しながらカラーを検討します。
Q. アイコンディションでは、なぜ視力以外も確認するのですか?
「見えること」は、視力だけでは決まりません。
左右の眼の協調、ピント調節、中心視と周辺視、光や色の感じ方など、さまざまな要素が関係しています。
そのためアイコンディションでは、「どこまで小さな文字が見えるか」だけでなく、「その見え方がその方にとって快適か」という視点も大切にしています。
Q. 科学的にまだ分かっていないこともあるのですか?
はい。あります。
視覚と姿勢制御、両眼視、感覚統合などについては多くの研究がありますが、カラーレンズについては、作用する仕組みや長期的な影響、特定の症状に対する効果など、まだ十分に解明されていない部分があります。
アイコンディションでは、分かっていることと、まだ分かっていないことを区別しながら科学的知見を参考にすることを大切にしています。